日本の針葉樹の床材

山地の多い日本では、国土面積の7割近くが森林。そのうち人工林は約4割で、ほとんどが針葉樹林です。代表的なのはスギ(杉)、ヒノキ(檜)、地域によってカラマツ、アカマツなど。針葉樹は成長が早く、加工もしやすく、建築用材に適しているため、第二次世界大戦後に盛んに植林が行われました。

今、それらの樹齢は50〜60年を経過し、まさに収穫期を迎えており、使わない手はありません。人工林はいわば「木の畑」ですから、環境面でも作物としての木材をどんどん活用して循環させていくことも必要です。

豊富にあるスギとヒノキは、ぜいたくに厚みのある板で使うことができます。厚板は断熱効果も調湿効果もあり、心地いい室内環境づくりに一役買ってくれます。足触りも心地いいスギとヒノキの無の床材を紹介しましょう。

スギ

 スギは〝あったか、やわらか〟

赤上小節と源平一等
赤上小節と源平一等

 

スギは日本固有の種で、屋久島から北海道南部まで、日本全国どの山でも見られる馴染みの深い木です。成長が早く、すくすくとまっすぐに育つことから「直ぐ木(すぐき)」が名前の由来と言われています。

木材としての特長は、軽く、やわらかで、木目が通り、加工しやすいこと。建築では主に柱材として使用されています。また、縦に割りやすいので、古くから桶・樽材としても利用されてきました。水分が多く、乾燥に時間と手間がかかるのがスギの難しいところですが、しっかりと乾燥させたスギ材は、断熱性に優れ、肌触りがサラッとして温かく感じられるため、近年では素足で気持ちよく過ごせる床材として人気が高まっています。ただ、メリットにもデメリットにもなるのはやわらかさ。足が疲れない、子どもやお年寄りに優しく、直に座っても心地よい反面、傷になりやすいということも。とは言え、その傷も住まい手が簡単に修復できる手軽さもあります。

ヒノキ

ヒノキは〝さっぱり、さわやか〟

無節(むじ)と生節(いきぶし)一等
無節(むじ)と生節(いきぶし)一等

 

ヒノキもスギと同じく日本原産。三大美林の一つに木曽檜が挙げられますが、他に吉野( 奈良県)、天竜( 静岡県)、和歌山なども良質なヒノキの産地として知られています。ヒノキの名の由来は擦り合わせて火をおこす「火の木」と言われており、乾燥しやすく、耐水性が高いため、風呂桶にも使われます。その特長は、淡い色調ときめ細やかな木肌、美しい木目、そして高貴な香り。加工しやすく、耐久性も高く、柱や土台の他、格式ある座敷の造作材としても好んで使われています。

材質はスギよりも密で硬いので、肌に触れた時の温かみはさほどありませんが、スギよりも傷になりにくいでしょう。湿度や温度の変化に強い、床暖房対応のタイプもあります。

素材の背景-Background Story-

ここで紹介したスギとヒノキは吉野産です。吉野杉、吉野檜といえば有名ブランドの一つ。奈良県中南部、吉野川流域の川上村、東吉野村、黒滝村が主な産地です。吉野林業の始まりは約500年前の室町時代。起伏の激しい山の斜面にぎっしりと密植された若木は、光を求めてまっすぐに伸び、枝打ちと間伐を繰り返すことで、年輪のギュッと詰まった丈夫な木に育ちます(写真)。

吉野杉
吉野杉(写真提供/吉野中央木材)

ていねいな管理によって根元から先端近くまで幹の太さが一定であることも大きな特長。柱としてはもちろん、古くから桶や樽の材として活用されてきました。山で伐採された原木は、昔は吉野川の水運で和歌山まで運ばれていましたが、昭和に入って「吉野貯木場」(写真)が整備され、一帯の原木を集積できるようになり、さまざまな製材所が立ち並ぶ一大生産地となりました。月に二度開かれる原木市場では、材木商が集まってにぎやかな競りが行われます。

原木市場
吉野貯木場(写真提供/吉野中央木材)