たどりついたコンセプトは「一年を通じて、温度変化と温度差を極力抑えておだやかに暮らす」こと

「ネオマの家」開設1周年企画
つくり手たちが語る。
知って欲しい、「あたたかい住まい」が実現した
心地よさとその理由 vol.1

「ネオマの家 IBARAKI SAKAI モデル」が完成して1年が経ちました。高性能断熱材「ネオマフォーム」を用いた高断熱・高気密住宅のモデルハウスとして、施工店の方々や一般ユーザーの方にも多数訪問いただき、その温熱環境を体感いただいています。

そこで改めて「ネオマの家」が目指した温熱環境と心地よさの検証をすべく、このプロジェクトに関わっていただいたみなさんに集まっていただき、設計・施工を振り返りながら、実現できた「あたたかい住まい」の魅力とこれからを語っていただきました。5回に渡ってお伝えしましょう。

夏も冬もエアコン1台で冷暖房できる高断熱・高気密住宅「ネオマの家」

2017年1月、茨城県境町にオープンした「ネオマワールド 快適空間ラボラトリー」。そこに建てられた「ネオマの家」は、高性能断熱材ネオマフォームを用いた高断熱・高気密住宅です。延床面積約40坪、総2階の木造住宅で、1階は広々としたリビング・ダイニング・キッチンと浴室などの水回り、2階には個室とファミリールームがあります。

この家の自慢は、「家中快適な室温で、経済的」なこと。その理由は、高断熱・高気密のつくりと夏も冬もエアコン1台で家中を冷暖房できる設計にあります。冬は、1階の階段下に設置したエアコンで家中を暖房。夏は、吹抜け上部の小屋裏に設置したエアコンで家中を冷房。吹抜けを通して、冷気・暖気が上下階を循環することで、エアコン1台で冷暖房できるようになっています。

▼快適空間ラボラトリー 展示棟と体験棟で「あたたかい暮らし」が体験できる、学べる
http://www.atatakazoku.com/kaitekilab/aboutlab/724

設計/株式会社みさき建築研究所
施工/高橋建築株式会社
インテリアデザイン/株式会社シトラス
プロデュース/旭化成建材株式会社 快適空間研究所

「ネオマの家」の目的とコンセプト

白石—-「ネオマの家」は、2015年から企画を始め、2016年5月着工、2017年1月にオープンしました。まずは、建設した目的とコンセプトを改めて振り返りたいと思います。

目的は、当社の断熱材「ネオマフォーム」を使った高断熱・高気密住宅の価値を工務店様など多くの方に体感していただく、ということです。住宅づくりにおいて、ZEH(※1)など省エネにつながる機能がますます求められていく中、断熱材業界では、性能値競争に陥っている感がありました。しかし、本来の価値は、数値の先にある「暮らし」にあり、その価値をぜひ体感していただきたい、という思いから「ネオマの家」を建てました。

旭化成建材株式会社 快適空間研究所 所長 白石真二
旭化成建材株式会社 快適空間研究所 所長 白石真二氏

大塚—-コンセプトは以下の通りです。
① 暖房(エアコン)を間欠運転(※2)しても(就寝時/23時には消して、起床時/7時につける)、「冬季の室温が16℃未満にならない家」を目標としました。現在、住宅性能に関しては国が定めたUA(※3)が指標となっていますが、その数値と省エネ性に捉われずに、身体にやさしい室内環境を目指しました。

②どこでも誰にでも建てられるプロトタイプ(原型)となるよう、特別な機器は使わず、一般的な建材や設備を用いています。

③デザインに関しては、多くの方々が違和感を感じない、シンプルなものを目指しました。特に外観は普通過ぎるくらいでしょう。建材も仕上げもオーソドックスなものにしています。

※1:ZEH—-ZEH(ゼッチ:ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス Net Zero Energy House)とは、住まいの断熱性能・省エネ性能を上げた上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量をプラスマイナス「ゼロ」とすることを目指した住宅のこと。
※2:間欠運転—-機械を連続して稼働するのではなく、一定の時間をおいて稼動と停止を繰り返すこと。
※3:UA値—-外皮平均熱貫流率(W/m2・K)の略称。換気を含まない、外壁・床・天井・屋根・窓などの面を貫通して逃げる熱を外皮面積で割ったもの。

旭化成建材株式会社 快適空間研究所 大塚氏

▼「ネオマの家 茨城境モデル」でめざしたもの
http://www.atatakazoku.com/kaitekilab/houseofneoma/ibraki-sakai-model/187

完成までを振り返って

御前—-私は建物の設計を担当させていただきました。高機能住宅の設計にあたっては、高橋さんが設計・施工された秩父パッシブハウス(※4)がとても参考になりましたね。実際に体感して、温熱環境の高いレベルを知りました。私自身もこれまで高性能の断熱材を使ったりして気遣ってきたつもりでしたが、レベルが違うことを認識しました。そこで、まず温熱環境をそのレベルにするためにはどうしたらいいのか、そこからのスタートでした。

設計を担当した御前氏

高橋—-私は施工を担当させていただきました。こんな小さな工務店でいいのかなと思ったけど(笑)、なんとかお手伝いできればと。

白石—-髙橋さんには日頃、ネオマフォームをご愛用いただいていたということがお願いした理由でもあります。長年使っていただいているので、今回も安心して施工をおまかせすることができました。

橘田—-私はプロジェクトの企画とインテリアデザインを担当させていただきました。このプロジェクトに関わるまで、いろいろな住宅を見てきて少なからず断熱材の知識はあったのですが、高橋さんの秩父のパッシブハウスを訪れるまではその効果を実感する機会はありませんでした。私も秩父パッシブハウスを訪れて、高断熱の家の本当のすごさを初めて実感しました。玄関に入った瞬間、「目から鱗が落ちた」と言っていいほどのこれまでにないあたたかさでした。そこで、そのレベルの体験住宅を建てることができたら、多くの(ネオマフォームの)ユーザーの方に一歩踏み出してもらえる、そこまで目指さなければと思ったんです。

インテリア
インテリアデザインを担当した橘田氏

高橋—-ほめてもらってうれしいけれど、私がというよりネオマフォームの性能によるところが大きいんですよ。そして、国の基準が甘いということもあるかと。世界(温熱先進国)の基準まで目を向けないと、ここまでの数値や省エネ性は出せなかったですね。

白石—-今回、私たちがこだわったのは、エアコンを連続運転よりも間欠運転する方が多いので、間欠運転で16℃を切らないようにすることでした。もう一つは、手に入れやすい一般の建材や設備を使って建てるというのがありました。そういった考え方や目標値などについて、どう思いましたか?

御前—-私は、家はローテクでつくるべき、という考えが元々あります。この2、30年でもいろんな先進のシステムが登場したけれど、それを現在も使っている家はほとんどない。そういうことを考えると、容易にチェンジできるとか、故障しても原因がよくわかって直せるものがいいと思っています。故障した時に原因がわかりにくく対応が難しい、と思われるハイテクなものは、住宅にはふさわしくないだろうと。ですから、「ネオマの家」も、特殊なものは採用していないということが大事だと思います。

橘田—-私もそう思っています。このプロジェクトの私たちのミッションは、この家を元に、全国の工務店の方が設計できるように広めていくことなので、できるだけ特殊なものを使わない設計が重要だと企画段階でも議論したところです。当然、今後もっと技術は進んでいくでしょうが、今回は現時点の一般品だけでけっこううまくできたのではないでしょうか。

大塚—-体験してもらった方々から、エアコンだけでよくやったね、という評価もたくさんいただきました。特別なもの、ハイテクなものを使っていないところに好感を持ったという声もありました。

高橋—-私は普段、20℃を切らないことを基準に設計にしているので、16℃と聞いた時には、もうちょっと目標温度を上げたほうがいいのでは、と言ってしまったんですが、コンセプトを聞いて、今の日本であたたかい家を広めるためには、簡単につくることができて、きちんと性能が担保されることが必要なんだと理解できました。躯体性能を上げることが本質的に重要だけど、そのために難しいことをしたら誰もできなくなってしまう。だから、難しいことはせずに、誰がつくっても同じようなものが簡単にできるということが重要だと思いました。

施工を担当した高橋氏
施工を担当した高橋氏

 

大塚—-高断熱でもいろいろなコンセプトがありますが、この家は、できるだけ長い時間、快適が得られることを優先して考えました。快適な時間が長く続くことが大切、と計画中も議論していて、おだやかな空間をつくりたい、というのも共通ワードでした。

白石—-あたたかい空間、あたたかい暮らしについて、議論を繰り返す中で、省エネ性だけにこだわらず、おだやかに過ごせるためにはどういう温熱環境がいいか、という考え方になっていきました。価値観はさまざまです。太陽光を生かすという価値観もあるし、意匠を優先する価値観もあるでしょう。私たちとしては、できるだけエネルギーを使わないで「一年中一日中いつでも、家中どこでも、温度変化を極力抑えておだやかに暮らす」という新しい価値観を提案したいと思っています。

※4:秩父パッシブハウス—-高橋建築が設計・施工を手がけたパッシブハウス。パッシブハウスとは、ドイツのパッシブハウス研究所が規定する性能認定基準を満たす省エネ住宅のこと。

▼「あたたかい暮らし」って何だろう?
http://www.atatakazoku.com/kaitekilab/houseofneoma/ibraki-sakai-model/121

座談会参加者

白石真二<しらいし・しんじ>
旭化成建材株式会社 快適空間研究所 所長
大塚弘樹<おおつか・ひろき>
旭化成建材株式会社 快適空間研究所
御前好史<みさき・よしふみ>
一級建築士/株式会社みさき建築研究所 代表取締役
旭化成工業株式会社(現旭化成株式会社)住宅事業部から建築設計事務所を経て独立。住宅の性能とデザイン、機能性を確保しながらも、合理的な方法で様々な無駄を省く設計監理を続けている。
[株式会社みさき建築研究所] http://misakiarch.com
高橋慎吾<たかはし・しんご>
一級建築士/高橋建築株式会社 代表取締役、パッシブハウスジャパン相談役
職人が社員の技術集団の工務店の社長。自らも大工を経験し今も現場作業も行う。「寒い家は壊される」ということに気づき、壊されない長持ちする家を作るため高断熱に取り組み始め、今に至る。寒い秩父の地に有りながら無暖房で暮らせる「秩父パッシブハウス」を建築。現在はパッシブハウスレベルの建物を最低の目標と定め、暖かい省エネな家を作り続けている。
[高橋建築株式会社]http://www.ta-k.jp
 

橘田洋子<きつだ・ようこ>
デザインディレクター ・ インテリアアーキテクト/株式会社シトラス 代表取締役、駒沢女子大学 人文学部 住空間デザイン学科 特任教授
東京ガス都市生活研究所、リビングデザインセンターOZONEを経て、マンションのリノベーションデザイン、店舗・ショールーム・インテリア商品などのディレクション&インテリアデザインなどを手がけている。生活者視点のロングライフデザインを目指し活動をしている。