エアコン1台で快適な空間を作る秘訣は、空気の流れ

「ネオマの家」開設1周年企画:つくり手たちが語る。知って欲しい、「あたたかい住まい」が実現した心地よさとその理由 vol.2

「ネオマの家 IBARAKI SAKAI モデル」が完成して1年が経ちました。「ネオマの家」が目指した温熱環境と心地よさの検証をすべく、このプロジェクトに関わっていただいたみなさんに集まっていただき、設計・施工を振り返りながら、実現できた「あたたかい住まい」の魅力とこれからを語っていただきました。

前回までの対談はこちら。
たどりついたコンセプトは「一年を通じて、温度変化と温度差を極力抑えておだやかに暮らす」こと

エアコン1台で可能な冷暖房の仕組み

白石—-「ネオマの家」の暖房は、階段室に設置したエアコンから床下に暖気を送って家全体を温めていくという床下エアコンのシステムを取り入れました。夏の冷房は、小屋裏に設置したエアコンから冷気を落とし、家全体を冷やしていくという仕組みです。エアコンは2台設置していますが、各シーズン使用するのは1台だけ。「一般的な家庭用エアコン1台で家全体を冷暖房できる」ということが特徴です。換気には、熱交換換気機器(※1)を1台、床下に設置しています。

御前さん、この仕組みについてはどういう考えで設計されましたか? 

階段下に設置した冬用のエアコン。さらにその床下には熱交換換気機器を設置。潜り込んで点検する高橋さん(右)。
階段下に設置した冬用のエアコン。さらにその床下には熱交換換気機器を設置。潜り込んで点検する高橋さん(右)。

御前—-2台のエアコンによる冷暖房システムは、高橋さんのアイデアですね。

このシステムを採用するにあたり、エアコンの位置や、2階各部屋の冷気が落ちる壁際のスリットなど内部の納まりにも気を遣いました。

天井際にはスリットがとられていて、このスリットから小屋裏からの冷気がゆっくりと落ちてくる仕組み。スリットは指先が入るほどの細さ。
天井際にはスリットがとられていて、このスリットから小屋裏からの冷気がゆっくりと落ちてくる仕組み。スリットは指先が入るほどの細さ。

また、これは見えないところですが、熱の無駄をなくすために、エアコンの暖気と熱交換換気機器から取り込んだ外気を床下でミックスしてから室内に出せるよう、熱交換換気機器を床下に設置したのですが、そのために熱交換換気の出口を冬と夏で変えるダンパーを入れたという工夫もありますね。

ダイニングの吹出し口。エアコンからの暖気が床を温めながら、ここから室内へと上がってくる。
ダイニングの吹出し口。エアコンからの暖気が床を温めながら、ここから室内へと上がってくる。

高橋—-熱交換換気とはいえ、冬は外から入ってくる空気はどうしても室温より低く(夏は高く)なるので温度ムラが出るんです。なので、外気が入ってきてすぐのところでエアコン気と混ぜちゃったほうが、室内の温度ムラが少ないだろうと。それで、ダンパーで上(夏期)と下(冬季)に出口を切り替えるという発想なんです。熱交換換気機器の置く位置に関しては、多くの場合は天井裏なのですが、以前つくったおうちで天井裏ではフィルターの掃除ができないというクレームがあって、それで低いほうが掃除しやすいだろうということと、稼動音があるので寝室からなるべく離した、という理由もありますね。

白石—-換気システムは新しいことにチェレンジしていただいて、結果的にもうまくいきました。そういう新しい試みをしたことは、よかったと思っています。空調と空気の回し方については、かなりノウハウがつまっているかと。みなさんのアイデアが集結されていますね。

大塚—-エアコン一台で冷暖房するシステムは、冬は比較的やりやすいのですが、夏の冷気をうまく下の階に落とすことがけっこう難しい。アイデアを結集して、夏の冷気もきれいに落ちるようにみんなで工夫しました。それが、うまく行きましたね。シーリングファンもかなり検討しました。冷気を効率的に落とすためには、自然の気流だけではどうしてもムリ。やはりファンが必要なのですが、エアコンの設定とどうバランスさせるか、どう組み合わせるかなどだいぶ議論したんです。

ダイニング上部の吹抜け、その上が小屋裏。ファンは、回転の向きによって、室内の空気の対流を促す場合と、冷気を上げる場合とを使い分けている。
ダイニング上部の吹抜け、その上が小屋裏。シーリングファンは、回転の向きによって、室内の空気の対流を促す場合と、冷気を上げる場合とを使い分けている。

御前—-通常は空気を循環させるためのシーリングファンですが、ここでは、冷気を下に落とす目的も兼ねています。これは他ではあまりやられてないですよね。

高橋—-それも回し方によって、下に落としたり、上げたりを大塚さんはすごく研究されましたよね。(夏は)人がたくさんいる時にはどんどん冷気を下げたり、快適な空間にする時にはわざと上げて、小屋裏であえてショートサーキット(※2)させて除湿力を高めたりとか。

大塚—-夏は22℃設定が一番快適みたいです。

高橋—-22℃では寒いだろうとか、設定温度が低すぎてエコじゃないと思う人もいるかもしれませんが、小屋裏の狭い空間で22℃まで下げると除湿が進んで、その空気が各部屋に流れていくと各部屋は27℃で55%くらいのとても気持ちいい室温になるということですね。

小屋裏に取り付けた夏用のエアコン。左の格子から2階へと冷気が下りていく。
小屋裏に取り付けた夏用のエアコン。左の格子から2階へと冷気が下りていく。

今のエアコンは、26℃になると湿度は70%から下がっていかない。効率を優先するための省エネ設計になっているからなんです。でも、外気温が下がる夜はそのためにエアコンが停止状態になり、湿度が上がって快適性が下がってしまう。そこで、シーリングファンで冷気を上げてショートサーキット状態にすることで、小屋裏空間に除湿された22℃の空気をつくり、居室の室温が27℃の適温になるようにシーリングファンの向き・風量をコントロールする。よく考えたと思いますね。そうすると寝ている時が快適になる。冬よりも夏の方が難しいシステムで、夏もここまで快適なのは素晴らしい。

大塚—-22℃設定でデータも測定しましたが、電気代は一日約108円でした。なので、省エネ性も十分あるかと思います。

※1:熱交換換気機器—-熱を交換しながら換気する機器。外気を室温に近い温度にしてから取り入れる。排気はその逆。
※2:ショートサーキット—-エアコンから吹き出した空気(冷気、暖気)をすぐ吸い込んで、狭い範囲で空気が循環してしまうこと。

ネオマの家の断面図
ネオマの家の断面図

▼「ネオマの家」の温度差のない室内空間。
http://www.atatakazoku.com/kaitekilab/houseofneoma/ibaraki-sakai-model/118

座談会参加者

白石真二<しらいし・しんじ>
旭化成建材株式会社 快適空間研究所 所長
大塚弘樹<おおつか・ひろき>
旭化成建材株式会社 快適空間研究所
御前好史<みさき・よしふみ>
一級建築士/株式会社みさき建築研究所 代表取締役
旭化成工業株式会社(現旭化成株式会社)住宅事業部から建築設計事務所を経て独立。住宅の性能とデザイン、機能性を確保しながらも、合理的な方法で様々な無駄を省く設計監理を続けている。
[株式会社みさき建築研究所] http://misakiarch.com
高橋慎吾<たかはし・しんご>
一級建築士/高橋建築株式会社 代表取締役、パッシブハウスジャパン相談役
職人が社員の技術集団の工務店の社長。自らも大工を経験し今も現場作業も行う。「寒い家は壊される」ということに気づき、壊されない長持ちする家を作るため高断熱に取り組み始め、今に至る。寒い秩父の地に有りながら無暖房で暮らせる「秩父パッシブハウス」を建築。現在はパッシブハウスレベルの建物を最低の目標と定め、暖かい省エネな家を作り続けている。
[高橋建築株式会社]http://www.ta-k.jp
 

橘田洋子<きつだ・ようこ>
デザインディレクター ・ インテリアアーキテクト/株式会社シトラス 代表取締役、駒沢女子大学 人文学部 住空間デザイン学科 特任教授
東京ガス都市生活研究所、リビングデザインセンターOZONEを経て、マンションのリノベーションデザイン、店舗・ショールーム・インテリア商品などのディレクション&インテリアデザインなどを手がけている。生活者視点のロングライフデザインを目指し活動をしている。