住まいのこれからの窓のあり方を提案するネオマの家

「ネオマの家」開設1周年企画:つくり手たちが語る。知って欲しい、「あたたかい住まい」が実現した心地よさとその理由 vol.3

「ネオマの家 IBARAKI SAKAI モデル」が完成して1年が経ちました。「ネオマの家」が目指した温熱環境と心地よさの検証をすべく、このプロジェクトに関わっていただいたみなさんに集まっていただき、設計・施工を振り返りながら、実現できた「あたたかい住まい」の魅力とこれからを語っていただきました。

前回までの対談はこちら。

日射と窓のバランスのいい関係性

白石—-訪れた方の中には、窓が少ない、小さいという意見もありました。それについては、どうでしょうか。

御前—-設計では、窓を減らしたわけではありませんし、小さくしたという意識もないですね。たまに耐震性能を上げるために窓を小さくする場合もありますが、ここではその必要もなかったので、さまざまなバランスをみてこのようにしました。窓が小さいと感じるのは、ロケーションの問題もあるかもしれませんね。ここは周辺が開けているから。今回は都市近郊の住宅地を前提としたので、このくらいの窓でいいのではないかと思います。

高橋—-日射の話もありますね。私は設計段階で、窓がちょっと小さいんじゃないかと言った記憶があります。当時、私は消費エネルギーを減らすことばかり考えていて、消費エネルギーを減らすには南側に大きな窓を設けて日射取得を優先するのが一般的な考え方だからです。それで、ここは太平洋側で冬場に日射が得られるので、窓を大きくすればたくさん熱が入って有利に働くのではと話しました。ネオマフォームを90㎜も外張りするのだから、もう秩父パッシブハウス(※1)ですよ、と。

でも、「ネオマの家」の意図を聞いて、この窓の大きさが理解できました。省エネ数値の追及よりも、温度変化の少ない身体にやさしい家を目指したんですよね。パッシブハウスの限界は、日射取得を多くしすぎると一日の中の温度ムラが大きくなってしまうことです。窓から日が入って昼間はあたたかくなるけど、夜は窓からどんどん熱が逃げていく。数値で平均すれば窓が大きいほうが有利だけど、室温の昼と夜の変化は大きなカーブを描いてしまう。その点、この家は昼間と夜の温度差があまりない。トータルによく考えられていたんだ、と感心しました。

橘田—-窓が小さいというのは、たぶんイメージもあるのだと思います。日本の昔の家屋は窓が多くて大きかったので、そういう原体験をもたれている方も多いのではないでしょうか。これまで数々のお宅を拝見していますが、都市型の住宅で窓の大きい家はあまりないですね。近隣の民家が迫っていて、庭も小さいから。むしろ、高機能、省エネが推奨されている昨今の家は、窓が小さくなっているのですが、それにみなさん気づいていないということもあるかと思います。新しい家についての知識や、大きい窓のメリット、デメリットもあまり知らなくて、暑い寒いという悩みが多いにもかかわらず、やはり窓は大きくしたい、という矛盾があるのかもしれません。

大塚—–窓の形式にもまだ慣れていないのかもしれませんね。LDKの大きな窓は、中央が固定されていて左右が開き戸になっています。今回は気密性を上げるために開き戸を採用したんです。一般的に日本の家は引き違い窓(引き戸)が多いので、この開閉方式は不便なんじゃないかと思う方も多いようですが、実は使いやすいんですよ。開け閉めが楽で、防犯にもいいし。

キッチンからリビングまで続く大空間には、南側のテラスに面して大きな窓がある。
キッチンからリビングまで続く大空間には、南側のテラスに面して大きな窓がある。
断熱性能にすぐれた樹脂サッシでガラスはダブルLow-Eトリプルガラス、中央は固定、左右は気密性の高い開き戸を採用。
断熱性能にすぐれた樹脂サッシでガラスはダブルLow-Eトリプルガラス(※2)、中央は固定、左右は気密性の高い開き戸を採用。

橘田—-断熱窓のガラスは、ダブルガラスが一般的になり、トリプルガラスも増えてきましたが、女性からすると戸が重くて、引き違いの場合は開け閉めがたいへん、爪がボロボロになる(笑)。お年寄りにも厳しいですよね。でも、秩父のパッシブハウスを見学したときに、窓を開けなくなる、と聞きました。換気機器が入っているので、換気のために窓を開ける必要がない。となれば、窓に軽さを大きく求める必要もなくなるし、なおさら引き違いである必要もない。高断熱で変わるな、と感じたのはまさしく窓でしたね。

白石—–高断熱・高気密の家では、これまでの家と窓の在り方や概念が変わったということでしょうね。そこに違和感やとまどいが生じているのかもしれませんね。

橘田—-新しい日本の窓の仕様も考えていく必要もあるのかもしれないですね。先ほども触れましたが、この家では室内はあえて引き戸にしました。というのも、日本の家は洋風化に伴って室内戸は開きに変わっていったのに、なぜか外部は引き違いのままなんですよね。それで、この家ではあえてその逆を提案しました。外側は断熱材と開き戸で気密をとったあたたかな家で、回遊性のある室内は引き戸にして開けっ放しで暮らす、と。引き戸なら省スペースで開閉のバタバタさもない。室内は日本の間仕切り文化を取り入れて、外部窓は機能性の高い新しいものを使った方がいいんじゃないか、という提案です。

御前—-サッシの話でいうと、網戸の問題がある。よく施主から、(引き戸以外の窓だと)網戸はあるのですか?と聞かれる。馴染みのない窓の場合、網戸を心配するんですよね。国内メーカーの場合は基本的にどんな種類のサッシでも網戸はあって、きちんと機能的につくられているので心配することではないのですけど、そういうところもまだユーザーに伝わっていないですね。

白石—-日射取得などの性能だけでなく、生活者の日々の使い勝手についてももっと伝えていかないといけないですね。

南側と西側の窓には、日射熱の約8割を防ぐことができる外部ブラインドを取り付けている。開閉やルーバーの角度もリモコンで調整可能。
南側と西側の窓には、日射熱の約8割を防ぐことができる外部ブラインドを取り付けている。開閉やルーバーの角度もリモコンで調整可能。

※1:パッシブハウス—-パッシブハウスとは、ドイツのパッシブハウス研究所が規定する性能認定基準を満たす省エネ住宅のこと。
※2:ダブルLow-Eトリプルガラス—-3枚のガラスで構成され、そのうち2枚がLow-Eガラスで構成されているガラスのこと。
  Low-Eガラスとは、放射を抑制する金属膜(Low-E)がコーティングされたガラスで、日射遮蔽・日射取得性能を高めるために使われる。

→窓も、温熱性能にとって大切なアイテムの一つ。
http://www.atatakazoku.com/kaitekilab/houseofneoma/ibaraki-sakai-model/278

座談会参加者

白石真二<しらいし・しんじ>
旭化成建材株式会社 快適空間研究所 所長
大塚弘樹<おおつか・ひろき>
旭化成建材株式会社 快適空間研究所
御前好史<みさき・よしふみ>
一級建築士/株式会社みさき建築研究所 代表取締役
旭化成工業株式会社(現旭化成株式会社)住宅事業部から建築設計事務所を経て独立。住宅の性能とデザイン、機能性を確保しながらも、合理的な方法で様々な無駄を省く設計監理を続けている。
[株式会社みさき建築研究所] http://misakiarch.com
高橋慎吾<たかはし・しんご>
一級建築士/高橋建築株式会社 代表取締役、パッシブハウスジャパン相談役
職人が社員の技術集団の工務店の社長。自らも大工を経験し今も現場作業も行う。「寒い家は壊される」ということに気づき、壊されない長持ちする家を作るため高断熱に取り組み始め、今に至る。寒い秩父の地に有りながら無暖房で暮らせる「秩父パッシブハウス」を建築。現在はパッシブハウスレベルの建物を最低の目標と定め、暖かい省エネな家を作り続けている。
[高橋建築株式会社]http://www.ta-k.jp
 

橘田洋子<きつだ・ようこ>
デザインディレクター ・ インテリアアーキテクト/株式会社シトラス 代表取締役、駒沢女子大学 人文学部 住空間デザイン学科 特任教授
東京ガス都市生活研究所、リビングデザインセンターOZONEを経て、マンションのリノベーションデザイン、店舗・ショールーム・インテリア商品などのディレクション&インテリアデザインなどを手がけている。生活者視点のロングライフデザインを目指し活動をしている。