設計とインテリアも、あたたかい家の暮らしを演出

「ネオマの家」開設1周年企画:つくり手たちが語る。知って欲しい、「あたたかい住まい」が実現した心地よさとその理由 vol.5

「ネオマの家 IBARAKI SAKAI モデル」が完成して1年が経ちました。「ネオマの家」が目指した温熱環境と心地よさの検証をすべく、このプロジェクトに関わっていただいたみなさんに集まっていただき、設計・施工を振り返りながら、実現できた「あたたかい住まい」の魅力とこれからを語っていただきました。

前回までの対談はこちら。

高断熱が叶える「あたたかい暮らし」

白石—-「家中があたたかいことで、ライフスタイルが変わる」。それをこの家で伝えたいと思っています。例えば、吹抜けがあることで家族のコミュニケーションも変わるとか、衣服や布団が減って収納も少なくなるとか。そういう観点で設計、デザインしてもらったところもありますね。

橘田—-そこは議論を重ねたところです。吹抜けに面した2階のファミリールームがまさにそういう空間です。かなりこだわりました。設計当初、この部屋は子ども部屋になる想定だったのですが、「上下階の温度差がなくて夜も快適」というこの家の特徴を感じてもらうために、寝る前に家族がちょっと集まれる楽しい場所にしよう、という話になり、御前さんがこのファミリールームを考えてくれました。よりコミュニケーションを促して人と人との距離が近くなるように、低座のしつらえにして目線を低く寄せ合って、例えば下でお風呂に入っている人の気配も感じながら、上下階でつながる、という想定です。

2階、吹抜けに面したファミリールーム。低座のしつらえで、人と人の距離感も縮まる。
2階、吹抜けに面したファミリールーム。低座のしつらえで、人と人の距離感も縮まる。

御前—-この吹抜けは、温熱環境的にもこの家のかなめです。冷暖房された空気が上下を行き来する空間で、吹抜けがないとエアコン一台で家中を冷暖房するという仕組みはつくれません。その吹抜けを視線も上下階でつながるように寸法やデザインも考えました。格子にしたのもそのためですね。気配だけでなく、ちらっと姿も見えるように。

暖気・冷気を家全体に循環させるための吹抜けは、家族をつなげる空間でもある。
暖気・冷気を家全体に循環させるための吹抜けは、家族をつなげる空間でもある。

橘田—-吹抜けは、開放的でダイナミックな空間をつくるにはとても効果的な手法ですが、寒い、掃除がしにくい、などの悪評もありました。それは、吹抜け自体がだめなのではなく、意匠性だけで吹抜けをつくってしまって、温熱環境を考えてこなかったからなんですね。要は設計次第。この家では、そういう温熱環境からの視点でも、吹抜けの良さと機能を体感していただきたいと思います。

白石—-上階でも下階でも暑くも寒くもない、ということも新しい価値だと思います。それによってライフスタイルが豊かなものに変わってくる。この家は、吹抜けの意匠性・空間性と温熱環境の両立をうまくはかれた事例かと。断熱性能の高い家だからこそ吹抜けの開放感を快適に味わえる。それを実感してもらえたらうれしいですね。他にもありますか? 

橘田—-回遊性の間取りで、室内は全部引き戸にしている点もそうです。家中、温度差がないから、戸を開けっ放しにしておける。ということは、戸の開け閉めなく、家中を移動できるということです。特に子育て中は、ドアの開け閉めも面倒だったり、うるさかったりしますが、開けっ放しにして子どもの様子も見られるので、お母さんは楽だと思いますね。引き戸にしたのは、開け閉めの楽さと省スペースであることからです。引き込んでしまうと空間もすっきり。もともと日本は引き戸の文化です。和の優れた文化を積極的に取り入れるという意図もありました。

白石—-キッチンもコミュニケーションを考えたものですよね。

橘田—-はい、ダイニングテーブルに続くシンクのあるカウンターと、レンジのあるカウンターをT字に配置して、ここも回遊できるようにしています。子どもも、どこからも手伝えるし、どこからでもつまみ食いができるし(笑)、どこからでも片付けられます。

テーブルにつながるシンクのカウンターと、レンジのカウンターにわけたキッチンは、数人でも使える配置。冷蔵庫の手前は廊下、洗面所、浴室へ続く引き戸。ここからぐるっと1階が回れる間取りになっている。
テーブルにつながるシンクのカウンターと、レンジのカウンターにわけたキッチンは、数人でも使える配置。冷蔵庫の手前は廊下、洗面所、浴室へ続く引き戸。ここからぐるっと1階が回れる間取りになっている。

→優れた温熱性能だからこそできる、つながった空間。
http://www.atatakazoku.com/kaitekilab/houseofneoma/ibraki-sakai-model/114

あたたかさを生かすインテリア

 
橘田—-インテリアデザインを考える上では、視点が2つありました。1つは不特定多数の方が見た時に、躯体の性能がきっちり見えるよう、いかにスマートにニュートラルにするか、という視点。もう1つは、少しだけ先のインテリアを提案するという視点。モデルハウスとしては半歩先くらいの夢を与えることも重要だからです。これらの視点を持って、空間に付随した内装がなるべく主役になるように考えました。例えば、御前さんがデザインした吹抜け上部のルーバーは空間の大きなアクセントになっているので、それを生かすように壁や家具などの色や素材を選び、建具や造作家具もデザインしました。

白石—-テーマでもある、あたたかさについてはどうでしょうか。

橘田—-もちろん一番意識しました。床材、建具、壁など手の触れる重要なところは基本的に自然素材を選んでいます。床は、1階はオークの無垢材、寝室のある2階はやわらかくてあたたかいスギ材を張りました。建具も木材で、壁は珪藻土の塗り壁です。あえてシンプルで建築を邪魔しないスタイルにしました。色彩計画もそうで、基本的にはベージュ系のグラデーションで椅子もソファも揃えており、アクセントとして2階では棚板や天板、座面などにグリーンをあしらっています。

自然素材を用いた落ち着いたインテリア。カラーもニュートラルに。
自然素材を用いた落ち着いたインテリア。カラーもニュートラルに。

→「ネオマの家」の木と土のあたたか性能。
http://www.atatakazoku.com/kaitekilab/houseofneoma/ibraki-sakai-model/117
→インテリア紹介:こだわりポイント(ファミリールーム・収納・玄関)
http://www.atatakazoku.com/kaitekilab/houseofneoma/ibraki-sakai-model/101
→インテリア紹介:キッチン
http://www.atatakazoku.com/kaitekilab/houseofneoma/ibraki-sakai-model/120

座談会参加者

白石真二<しらいし・しんじ>
旭化成建材株式会社 快適空間研究所 所長
大塚弘樹<おおつか・ひろき>
旭化成建材株式会社 快適空間研究所
御前好史<みさき・よしふみ>
一級建築士/株式会社みさき建築研究所 代表取締役
旭化成工業株式会社(現旭化成株式会社)住宅事業部から建築設計事務所を経て独立。住宅の性能とデザイン、機能性を確保しながらも、合理的な方法で様々な無駄を省く設計監理を続けている。
[株式会社みさき建築研究所] http://misakiarch.com
高橋慎吾<たかはし・しんご>
一級建築士/高橋建築株式会社 代表取締役、パッシブハウスジャパン相談役
職人が社員の技術集団の工務店の社長。自らも大工を経験し今も現場作業も行う。「寒い家は壊される」ということに気づき、壊されない長持ちする家を作るため高断熱に取り組み始め、今に至る。寒い秩父の地に有りながら無暖房で暮らせる「秩父パッシブハウス」を建築。現在はパッシブハウスレベルの建物を最低の目標と定め、暖かい省エネな家を作り続けている。
[高橋建築株式会社]http://www.ta-k.jp
 

橘田洋子<きつだ・ようこ>
デザインディレクター ・ インテリアアーキテクト/株式会社シトラス 代表取締役、駒沢女子大学 人文学部 住空間デザイン学科 特任教授
東京ガス都市生活研究所、リビングデザインセンターOZONEを経て、マンションのリノベーションデザイン、店舗・ショールーム・インテリア商品などのディレクション&インテリアデザインなどを手がけている。生活者視点のロングライフデザインを目指し活動をしている。