暑さ、寒さの感じ方と快適な室内環境

人はどうやって「暑さ」「寒さ」を感じているのでしょうか? 快適とはどんな状態をいうのでしょうか? 説明の難しいあいまいな感覚のようにも思えますが、快適な温熱環境をつくるために 研究が進められているところです。 建築環境学がご専門の首都大学東京の須永教授に解説いただきました。

Q 基本的なことからうかがいたいと思います。室内の熱環境において「快適」とは、どういう状態をいうのでしょうか?

A僕は3つの状態があると考えています。一般に言われている、「1.暑くも寒くもない状態」と、「2.お風呂上がりに風に吹かれ涼しく感じた時などの気持ちが良い状態」、それから、「3. 上記1の中でも足下が暖かい、より快適性が高い状態」、の3つです。

では、「1.暑くも寒くもない状態」とはどういう状態かというと、人間の自分でつくる熱量と身体から逃げていく熱量が同じ、つまりプラスマイナス0のバランスがとれている状態をいいます。

私たち人間のエネルギー源は、食べ物ですね。食べて、常時、熱を発しています。その量は活動状態(下の図の5)により異なりますが、この体内でつくる熱量と身体から逃げていく熱量のバランスで暑さ寒さが決まります。例えば、室内の温度が低いときなどに、身体の熱が必要以上に奪われると、「寒い」と感じます。反対に、室温が高いと身体から熱がなかなか逃げず、「暑い」と感じます。さらに、室温が体温より高くなるなどして身体の熱を充分に放出できなくなると、熱中症になることもあります。健康のためにも、熱量をバランスさせることが大切です。

Q では、家の中で「暑い」「寒 い」と感じるのは、具体的にどのようなことが影響しているのでしょうか?

A6つの要素があります。以下の図を見て下さい。空気の温度、湿度、気流(風)、室内表面温度の4つの環境的要素と、活動状態(代謝量)と服装(着衣量)の2つの人間側の要素です。

特に大事なのは環境側の4つの要素 これら6つの要素が変動することで「暑い」「寒い」という体感が生じます。そこで、快適な住まいの温熱環境を考える際には、まず建 築的な手法でコントロールできる環境側の4つの要素をうまく整えることが重要です。
特に大事なのは環境側の4つの要素
これら6つの要素が変動することで「暑い」「寒い」という体感が生じます。そこで、快適な住まいの温熱環境を考える際には、まず建築的な手法でコントロールできる環境側の4つの要素をうまく整えることが重要です。

環境的要素の温度、湿度、気流については、すぐ理解できると思いますが、室内表面温度は耳慣れない言葉かもしれませんね。室温が快適域でも、壁や床、天井の表面温度が低い(冷たい)と体の表面から放射で熱を奪われ、人は寒さを感じます。夏はその反対で、冷房で室温を下げても、床・壁・天井の温度が高ければ、暑さを感じます。

快適さを得るには、人間側の2要素はある程度調整できますが、環境側要素4つについては建築的な手法でうまく整えることが大切になります。

Q この4要素で考えると、理想の室内環境とは、どういうものになりますか?

Aあたたかい暮らし研究会」では、以下の表にある数値を目標と考えています。温度は、冬20〜22℃、夏26〜28℃で、湿度は40~70%です。気流は、0.15m/s以下だと人間は風を感じないので、冬は0.15m/s以下、夏は少し風があったほうが涼しく感じるので、0.5m/s 以下としています。室内表面温度は、室温と同じが理想です。これらが快適環境の目安となります。

この目標の室内環境にするには、建物の断熱・気密性能を高めることが必須となります。断熱・気密性能の低い家では、冬に室温を22℃にしても室内表面温度を20〜22℃にすることは難しく、ガラス窓などは10℃以下になってしまう時もあります。また、室内表面温度が低いとそこで冷やされた空気が床の方に流れ、室内の上下で温度差が生じて足下が寒くなり、また気流も感じてしまいます。高断熱高気密の家であれば、温度ムラの少ない、この表のような室内環境が実現できて、快適に暮らすことができます。

さらに、最初に述べた「3. 1の中でも足下が暖かい、より快適性が高い状態」の状態、すなわち、昔からいう頭寒足熱の状態にすると、より快適な状態になります。我々の研究(*)で、人は頭のあたりの気温が21〜22℃ 、足元が26℃程度のときに最も快適に感じることがわかりました。だから床暖房が心地いいと感じるんですね。断熱・気密性能の低い住宅や吹き抜けのある住宅でエアコンなどの温風暖房をすると、足元が寒くて天井の方があたたかいという頭寒足熱とは反対の状態になってしまいます。高断熱高気密の家にして、さらに床暖房ができるようにすると、非常に快適性の高い室内熱環境を、それも少ない光熱費で、つくることができます。

※堀祐治、伊藤直明、須永修通、室恵子、 不均一熱環境における熱的快適感の評価に関する研究―床面温度が熱的快適性に及ぼす影響と局部温冷感による熱的快適性の予測についてー、日本建築 学会計画系論文集、No.501, pp.37-44, 1997年1月

首都大学東京・須永修通教授
首都大学東京・須永修通教授
須永修通<すなが・のぶゆき>
工学博士。専門は建築環境学、なかでも「バイオクライ マティックデザイン」や「人体の快適性」に取り組む。最 近のテーマは、高性能住宅や既存建築の環境配慮手法、 省エネ行動、断熱内戸の開発等。著書に『設計のため の建築環境学~みつける・つくるバイオクライマティッ クデザイン~』(彰国社)など。